人類生態学研究室(SmileLab)はこのたびBill & Melinda Gates Foundation(ビル&メリンダ・ゲイツ財団)の助成金を獲得しました。
研究課題名
Improving Menstrual Hygiene Management in Asia and Africa (Co-creation of Women’s Health)
アジアとアフリカにおける月経衛生管理の改善(女性の健康の共創)
研究代表者
山内太郎
研究期間
2024年9月1日から2025年9月30日まで
研究の概要
月経衛生管理(MHH)は、グローバルサウスの女性の健康において依然見過ごされがちな重要な側面です。 特に、水、トイレ、衛生(WASH)へのアクセスの制限、情報不足、手頃な価格の製品の不足、そして社会文化的要因(例えばスティグマ:差別や偏見)によって、劣悪な月経衛生管理(MHM)プラクティスが発生し、女性の健康と福祉に悪影響を及ぼしています。 これらMHHの問題はあまり注目されておらず見過ごされがちですが、グローバルノースに住む女性や少女にも同様に影響を与えています。 例えば、日本などの高所得国(HIC)では、若い女性の間で「生理の貧困」が深刻な問題として認識され始めています。これは、月経製品の入手しずらさ、社会における月経への配慮の欠如、文化的要因(例えばスティグマ)として説明できます。同様の問題は、低中所得国(LMIC)の特にスラムのような人口密集地域で一般的かつ顕著に見られます。また、アジアとアフリカの間の地域的・民族的な違いも考慮する必要があります(例えば新興国と最貧国など)。 MHHの文化的文脈に関しては、各コミュニティに根付いた伝統的な知識や行動を慎重に検討し、マッピングすることが重要です。文化間の類似点と相違点を探求することは、他の生活環境における既存の問題を解決するための重要な鍵となる可能性があります。 本研究の目的は (1)日本、バングラデシュ、インドネシア、カメルーン、ザンビアなどHICおよびLMICの特定のMHH問題を調査すること (2)MHHに関する地域固有の方法を探求すること にあります。 さらに全体的な目標として、各研究地に合わせたボトムアップアプローチを共創し、他の国や地域で女性と少女の健康と福祉を向上させることを設定しています。 データや革新的な研究手法(例:参加型アクションリサーチ、PAR)および市場主導の解決策を統合することで、女性と少女をエンパワーメントし、女性の健康と福祉を進展させる包括的かつ学際的なアプローチを提案します。
研究テーマと研究地は、これまで本研究室が構築してきたネットワークに基づいています。
ジェンダーとMHH【日本、札幌】
データによると、日本はジェンダー平等スコアが低く(146か国中118位)、日本人男性のみならず女性もMHHに対してスティグマを抱いていることが研究で明らかになっています(隠す、公の場で話さないようにするなど)。日本に住む日本人および外国人女性の日常生活体験を比較研究として調査し、ジェンダーギャップを検証します。また、女性の月経に対する価値観の形成過程を理解するために、男性(配偶者、友人、兄弟)の知識と態度についてもインタビューを行います。
宗教的・文化的価値とMHH【インドネシア、スラバヤ】
私たちの以前の研究では、WASH施設へのアクセスが都市スラムの子供たちの健康に影響を与えることが明らかになっています。今回の研究では、現地の女性と男性、少女、学校の教師へのインタビュー調査を通じ、MHHプラクティスを妨げる(または改善する)可能性がある社会文化的要因(例:文化的価値)に焦点を当てます。また、アンケート調査を実施し、少女のMHHに関する知識、態度、実践と諸要因との関係を調査します。
医療従事者とMHH【バングラデシュ、ラジシャヒ】
看護・助産学校の学生(男性を含む)を対象に、MHHの知識と実践を調査します。学生は特に農村地域で一般市民に健康情報を広める重要な役割を担うため、この側面を理解することが重要です。知識、態度、実践に焦点を当てた介入を実施し、介入前後の変化を調査します。
参加型アクションリサーチ(PAR)とMHH【ザンビア、ルサカ】
過去のプロジェクト「サニテーション価値連鎖の提案」で、ザンビアのルサカに子どもクラブDziko Langaを地域ベースで構築しました。今回の研究では、子どもや若者がPAR手法(例:フォトボイス、アート、デジタルストーリーテリング)を使用してMHM関連の体験を調査します。研究結果は、健康的で文化的に受け入れられる実践と解決策を共創するために使用されます。例えば、地域で入手可能で手頃な材料で作られた月経製品の共創が考えられます。
先住民のMHH【カメルーン東部地域ロミエ】
30年以上にわたり、カメルーンの森林に住むバカ狩猟採集民の生活と健康に関する研究を行ってきました。研究者、現地NGO、住民との関係に基づき、他の生活環境との類似点と相違点を探るために、先住民(少年・少女)のMHH(知識、態度、行動)を集中的なフィールドワーク(観察とインタビュー)を通じて探求します。
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